淡路島の温泉付き物件|買うときに確認すること、維持費、宿にできるか

「温泉が出ます」と書いてあっても、買った人がそのまま使えるとは限りません。源泉は自前か引湯か、温泉法の許可は誰が持っているか、維持費はいくらか。淡路市岩屋の鉄骨造の物件を例に、温泉付き物件の見方を書きました。
淡路島でご案内していて、いちばん驚かれるのが「温泉が出ます」という物件です。淡路市岩屋、淡路ICから車で3分の場所に、実際にそういう建物がありました。
ただ「温泉が出る」を額面どおりに受け取るのは危険です。権利、法律、維持費。順に見ていきます♪

先に、温泉物件で確認すべきこと
- 源泉は自前か、引湯か。ここで話がまったく変わります
- 温泉法の許可を、誰が持っているか。掘削・動力・利用でそれぞれ許可が要ります
- 引湯なら、権利が売買に付いてくるか。管理組合や供給元との契約次第です
- 維持費はいくらか。引湯料、ポンプ、配管の更新。ここが毎年効いてきます
「温泉付き」と書いてあっても、買った人がそのまま使える保証はありません。売買のときに、権利と契約を必ず確認します m(_ _)m
淡路島のどこで温泉が出るのか
淡路島の温泉は、どこか一か所に集まっているわけではありません。島の北・中・南、それぞれにあります。
- 淡路市——岩屋の美湯 松帆の郷、東浦花の湯、一宮のパルシェ香りの湯
- 洲本市——市街地の海沿いに宿が集まる洲本温泉、それに五色町の五色温泉
- 南あわじ市——6つの泉源をまとめて「南あわじ温泉郷」と呼んでいます
南あわじ市が公表している6つの泉源と泉質は、次のとおりです。
- うずしお温泉——ナトリウム-炭酸水素塩低温泉
- 南淡温泉——ナトリウム・カルシウム・塩化物低温泉
- 南あわじ温泉——カルシウム・ナトリウム塩化物泉
- 潮崎温泉——ナトリウム炭酸水素塩温泉
- 三原温泉——アルカリ性単純温泉・ナトリウム炭酸水素塩温泉
- サンライズ温泉——フッ素、イオンを含む温泉
ここで一つ、知っておいていただきたいことがあります。兵庫県の温泉は、そのままでは入れない低温のものが多数派です。
環境省の調査(令和6年度)によると、兵庫県にある源泉443本のうち、42度以上あるのは77本だけ。全国では27,899本のうち12,695本、つまり45%が42度以上なのに、兵庫県は17%にとどまります。淡路市が公式ページで紹介している3施設も、泉質はすべて「低温泉」と書かれています。
温度が足りないということは、沸かして使うということです。その燃料代が毎月かかる、という話に直結します。
もう一つ。兵庫県の源泉443本のうち、181本は「未利用」です。4割が、出ているけれど使われていない。温泉が出る土地であることと、温泉が使える物件であることは、別の話だということです。
なお「淡路島に源泉が何本あるか」は、環境省も兵庫県も市町別の数字を出していません。島の内訳は分からない、というのが正直なところです m(_ _)m
ただ、昔の話ではありません。2026年2月の兵庫県環境審議会温泉部会で、淡路市尾崎の掘削と、淡路市釜口の動力装置が許可されています。淡路島では今も、新しく温泉が掘られています。
その物件は、こういう建物でした

場所は淡路市岩屋、淡路ICから車で3分。神戸からのアクセスも良い立地です。鉄骨造の建物で、外観も室内も大変きれいに使われていました。

玄関を入ると、いきなり広いリビングダイニング。鉄骨造ならではの天井が、あえて素材を活かした造りになっていて、これがかなり格好いい。


このむき出しの鉄骨は、使い方次第です。オールブラックでモダンにまとめてもいいし、白でBOHOスタイルにしてもいい。素材が強いので、方向を決めれば一気に決まります♪


キッチン奥の階段を上がると、2階には過ごしやすい広さの部屋が2室。民泊、貸別荘、自己利用の別荘——温泉が使えるなら、考えることはだいたい同じになります。
温泉法の話を、もう少し具体的に
掘るには許可が要ります
温泉を掘削するには、都道府県知事の許可が必要です(温泉法)。動力(ポンプ)で汲み上げる場合も、別に許可が要ります。
そして、思い立ってすぐ掘れるものではありません。兵庫県では申請の受付が年に1回程度の締切制で(次回の締切は2026年12月4日の予定)、兵庫県環境審議会の温泉部会にかけて答申を受けます。掘削地点を選んだ理由書や、揚湯試験の結果を添える決まりもあります。許可が下りてからの有効期間は2年です。
工事の費用は、場所と深さでまったく変わります。ここで金額を書くと誤解のもとになるので書きません。掘れば必ず出るというものでもないということも含めて、現実的な選択肢にはなりにくいのが実情です。
すでに出ている物件を買うのが現実的です
だからすでに温泉が引かれている物件を買うほうが、圧倒的に早くて安いのです。ただしそのとき見るのが権利関係です。
- 自前の源泉——土地とセットで権利が移るのが基本。ただしポンプと配管の維持は自分持ちです
- 引湯(供給を受けている)——供給元との契約が承継できるかを必ず確認します。引湯料が毎月かかります
宿にするなら、さらに許可が要ります
温泉を使って人を泊めるなら、旅館業法または住宅宿泊事業法の手続きが別に必要です。公衆浴場として不特定多数に使わせるなら公衆浴場法も関わります。「温泉が出る」と「温泉宿ができる」の間には、いくつも段があります。詳しくは淡路島で民泊を始めるときの記事もあわせてご覧ください。
持ったあと、いくらかかるのか

温泉付きの物件でいちばん聞かれるのが、ここです。先にお断りしておくと、金額がはっきり決まっているものと、物件ごとにまったく違うものがあります。分けて書きます。
法律で決まっているもの
- 10年に一度、温泉成分の分析を受け直す義務があります。温泉を公共の浴用や飲用に使っている場合の決まりで(温泉法18条3項、温泉法施行令)、受けなかったり、結果に基づいて掲示を変えなかったりすると罰則があります
- その分析の費用は、他県の公的機関が公表している料金で7〜8万円台です(香川県環境保健研究センターの鉱泉分析が79,550円、三重県保健環境研究所が76,820円+現地調査の実費)。兵庫県内の登録分析機関は県立健康科学研究所・ひょうご環境創造協会・株式会社HERの3つで、料金は各機関にお問い合わせください
- 温泉の採取について許可や確認を受けている場合は、10年以内ごとに可燃性天然ガスの測定と届出も要ります(兵庫県の規則)。これは自分では測れず、登録分析機関などに依頼します
- 宿にするなら、旅館業の許可申請が22,000円、経営を引き継ぐときの地位の承継が7,400円です(兵庫県)
物件ごとに違うもの
- 汲み上げるポンプの電気代
- ポンプの交換
- 配管の掃除
- 沸かすための燃料代
- よそから引いている場合の引湯料
この5つは、金額の目安をお出しできません。源泉の深さ、温度、契約の形で、まるで違うからです。インターネットで「井戸ポンプの交換は○万円」といった数字が出てきますが、あれは家庭用の井戸の話で、温泉を汲み上げる設備とは別物です。あてにしないでください。
では、どうやって確かめるか。買う前に、売主さんに1年分の実額を見せてもらうことです。電気代の明細、引湯料の請求書、直近の温泉成分分析の請求書。この3つが揃えば、だいたいの姿が見えます。
淡路オフィスでは、温泉付きの物件をご紹介するときに、この確認を先にお願いしています。数字が出てこない物件は、そのことも含めてお伝えします。
温泉は、重要事項説明書に自動では載らない
これがいちばんお伝えしたいことです。
不動産を買うとき、契約の前に重要事項説明を受けます。宅地建物取引業法35条で、説明しなければならない事項が1号から14号まで決まっています。
その14の項目に、「温泉」という言葉は一つも出てきません。
近そうな項目を見ても、そうなのです。1号は「登記された権利の種類及び内容」ですが、温泉を使う権利は、ふつう登記されません。4号は「飲用水、電気及びガスの供給並びに排水のための施設」ですが、ここに温泉は入りません。
つまり温泉のことは、聞かなければ出てこない。書類を読めば分かるものではない、ということです。
だから、確認する項目を先に決めておいてください。
- 温泉分析書はあるか(無ければ、ただの井戸水である可能性を考えます)
- 前回の分析はいつか(10年を過ぎていないか)
- 源泉は自前か、よそから引いているか
- 引いているなら、供給元との契約を引き継げるか。月いくらか
- 温泉法の許可を、いま誰が持っているか
権利についても、思い込みが危ないところです。環境省が出している温泉法の逐条解説には、「特別の慣習等によって、当該土地につき温泉の独占的専用権を有する者があるとき」は、その土地の権利を持っていても温泉を使う権利は無いものとして扱う、と書かれています。土地を買ったからといって、その下の温泉を自由に使えるとは限らないということです。淡路島のどの温泉地にどういう慣習があるかは物件ごとに違うので、そこは一件ずつ確かめます。
許可の引き継ぎも、自動ではありません。温泉法が「地位の承継」として定めているのは、法人の合併・分割と、相続の場合で、どちらも知事の承認が要ります(相続は亡くなってから60日以内の申請)。売買のときに温泉の許可がどう扱われるかは、淡路島を管轄する洲本健康福祉事務所 食品薬務衛生課(洲本市塩屋1丁目439-1/0799-26-2067)に、事前にご相談ください。温泉も旅館業も、窓口はここです。兵庫県も「申請にあたっては必ず事前相談を」と書いています。
ご自分の物件に温泉が付いていて、手放すかどうかを迷っていらっしゃる方は、淡路島の家・土地を売りたい方へもご覧ください。
それでも、温泉には価値があります
ここまで注意点ばかり書きましたが、温泉が使えるというのは、他で代えのきかない付加価値です。
- 宿にするなら、それ自体が集客理由になります。設備投資では作れません
- 自己利用でも、毎日入れる温泉という日常はなかなかありません
- 淡路島には温泉地が点在していて、「島の温泉」という文脈が観光と結びついています
だからこそ権利をちゃんと確認したうえで買えば、いい買い物になります♪
あわせて読みたい淡路島の古民家で「囲炉裏の店と宿」をひらく|五色町の大きな古民家を見てきました
よくいただくご質問
いまも同じ物件はありますか?
温泉付きの物件は数が少なく、出てから決まるまでが早いです。いまご紹介できるものがあるか、その場でお調べしてお返事します。サイトに出していない物件もありますので、「温泉付きを探している」とだけお伝えください♪
温泉の維持費は、どのくらいかかりますか?
10年に一度の温泉成分の分析(他県の公表料金で7〜8万円台)のように法律で決まっているものと、ポンプの電気代や引湯料のように源泉ごとに違うものがあります。持ったあと、いくらかかるのかに分けて書きました。買う前に売主さんから1年分の実額を見せていただくのが、いちばん確かです。
鉄骨造の建物は、木造と比べてどうですか?
寿命が長く、間取りの自由度が高いのが利点です。一方で断熱性能は仕様次第で、鉄は熱を通すので結露対策が要ります。またリフォームのとき、木造より工事の手間がかかることがあります。広い空間を作りたいなら鉄骨は有利です。
温泉が出るか、どうやって確認するのですか?
温泉分析書という書類があります。温度、成分、湧出量が記載されていて、温泉法上の「温泉」に該当するかもここで分かります。売主さんに提示をお願いします。これが無い場合は、ただの井戸水である可能性も考えます。
付加価値のある物件は、確認事項も多いです
温泉、井戸、農地、接道。淡路島の物件には「ついてくるもの」が多く、そのぶん確認事項も増えます。
私たちの仕事は、良いところを並べることではなく、買ってから困らないように先に洗い出すことだと思っています。温泉付きをお探しの方、まずはご相談ください♪
逆に、売るときにも同じことが起きます。ご自身の土地や建物に何が付いているのか分からないまま、手放すかどうかを迷っていらっしゃる方も少なくありません。淡路オフィスでは、まず何が付いているかを整理するところからお手伝いしています。
気になる!と思われたら是非♪淡路島の未公開物件もあわせてご案内できます。